部下が「自分で考え、動く」ために管理者ができること|国立病院機構 関東信越グループで人材マネジメント研修を実施しました
2026年10月31日、独立行政法人国立病院機構 関東信越グループの薬剤部科長、副薬剤部科長および受講を希望する主任薬剤師を対象に、「部下・後輩が自ら考え、行動するための人材マネジメント」をテーマとした研修を実施しました。
「指示しないと動かない」「主体性を持ってほしいが、どう伝えても変わらない」「結局、自分が全部巻き取らないと回らない」。今回の研修は、こうした薬剤部門の管理職が直面しやすい悩みからスタートしました。
人手不足や業務量の増加、働き方改革などが重なる中、管理者自身が現場業務を巻き取り、育成や対話に時間を使えなくなる。その結果、現場で判断できる人が育ちにくくなり、さらに管理者へ相談や意思決定が集中するという悪循環も起こります。
今回の研修では、「もっと主体性を持って」と本人に求めるだけではなく、日常の仕事の中で、どのように「自分で考える機会」をつくるかを具体的に考えました。
「教える」だけでは、自分で考えて動くまでは育ちにくい
研修の前半では、「わかる」「できる」「自分から動く」を分けて考えました。
説明を理解し、何をすべきか知っている状態が「わかる」。実際の場面で判断し、一人でも再現できる状態が「できる」。さらに、自分で状況を見て、何をする必要があるかを考え、行動するのが「自分から動く」です。
管理者がすべてを教えれば、「わかる」までは支援できます。しかし、「できる」「自分から動く」まで育つためには、本人自身が経験し、その経験について考える必要があります。
そこで今回、日常業務そのものを「学習機会」に変えるという視点から、経験学習と振り返りを扱いました。
参加された先生からも、
「わかる→できるまでで教育できたと思っていましたが、『自分で考え行動する』までできて教育が完遂するということに気づくことができました」
という声をいただきました。
経験は、振り返ることで「次に使える学び」になる
同じ経験をしても、そこから学べることは同じではありません。
「あのとき、何をしたのか」「なぜそう判断したのか」「次に同じ状況になったらどうするのか」と一度立ち止まって考えることで、経験は次の場面でも使える学びになります。
さらに、自分の考えを他者に話したり、他者の考えを聞いたりすることで、自分一人では気づかなかった視点を得ることもできます。
今回のアンケートでも、
「経験を振り返る際には、できた・できなかったという評価ではなく、行動や意図を言語化することが大切だと学びました。今後は、スタッフの気づきや成長につながる関わりを意識していきたいと思います」
「現在の職場と振り返りながらお話を聞かせてもらいました。現場の中核を担う主任を育てられるよう、良い職場作りができるよう資料を参考にさせていただきます」
といった声をいただきました。
忙しい現場だからこそ、「続けられる仕組み」にする
一方で、「声を掛けた方がよい」「振り返りをした方がよい」と理解しても、忙しい日常の中では続かないことがあります。
そこで研修では、「もし○○したら、△△する」と、行動のきっかけと実際の行動をあらかじめ結びつけるIf-Thenプランニングも紹介しました。
例えば、「部下から相談されたら、すぐ答えを言う前に『どう考えた?』と聞く」「ミスの報告を受けたら、まず『報告してくれてありがとう』と伝える」といった形です。
「もっと声を掛けよう」という目標だけではなく、いつ、何をするかまで決めておくことで、忙しい日常の中でも実際の行動につなげやすくなります。
参加された先生方からも、
「If-Thenプランニングなど具体的な方法がわかり実践してみようと思います」
「いつも、インシデント報告を部下から受けますが、グッド事例報告も定着するように働きかけてみようと思いました」
「本日は明日からでもすぐ実践できるような具体的な話から、今後を見据えて考えさせられる話まで、勉強になる講義でした」
など、具体的な実践につなげたいという声をいただきました。
振り返りやフィードバックを機能させる前提は「関係性の質」
研修の後半では、振り返りやフィードバックの方法だけでなく、そもそも相手が安心して話せる関係があるかという点も扱いました。
どれだけ適切な問いを投げかけても、本人が「何を言っても否定される」「失敗を話したら評価が下がる」と感じていれば、率直な振り返りは起こりにくくなります。
一方で、お互いに尊重し、一緒に考えられる関係があると、思考が深まり、主体的な行動や新しい挑戦につながりやすくなります。
そこで今回、組織の中の「関係性の質」は、大掛かりな制度だけでつくるものではなく、日常の小さな行動から変えられることもお伝えしました。
参加された先生方からも、
「現在の職場について、赴任したときと比べ、職場の雰囲気が良くなり、数字も上がってきたことについての答え合わせができました。講義の内容について、現在できていることもいくつかあり、少し自信になりました」
といった声をいただきました。
管理者が一人で頑張るのではなく、人が育つ関係と仕組みをつくる
研修後のアンケートでは、単に「学んだ」で終わるのではなく、自施設でどのように実践するかまで具体的に考えてくださった声が多く寄せられました。
「日頃から部下の指導について悩んでおりましたので、本日の講演内容はまさに今の自分の課題に重なるものでした。自ら考え、行動できる部下を一人でも多く育てられるよう、明日からの指導に生かしてまいります」
「実践的な、かつ、薬剤師に特化した内容で、トライしていきたいことがたくさんありました」
といった声をいただきました。
今回の研修では、経験する機会のつくり方、考えを引き出す問いかけ、できている行動へのフィードバック、日常の声掛けやIf-Thenプランニングなど、現場ですぐに試せる関わり方をいくつかご紹介しました。
今回お伝えした内容の中から、何か一つでも、日々の部下・後輩との関わりを考えるヒントとして持ち帰っていただければと思います。
pharmakeでは、認知科学・教育心理学・組織行動学などの知見を、病院薬剤部の実際の場面に置き換えながら、翌日から実践できる人材育成・組織マネジメント研修を行ってまいります。