後輩の考える力を育てるには?病院薬剤師の人材育成で使える「問い」の作り方

2026年08月24日
お役立ち情報

後輩や部下に「自分で考えてほしい」と思っていても、つい答えを先に教えてしまうことはありませんか。病院薬剤部では、安全性や正確性が求められるため、必要な知識や手順を明確に伝えることは欠かせません。一方で、すべてを教え続けていると、本人が自分で判断する機会が減ってしまうこともあります。

重要なのは、「教えるか、考えさせるか」の二択ではなく、必要な知識を伝えたうえで、どの部分を本人に考えてもらうかを考えることです。この記事では、病院薬剤師の後進育成において、後輩・部下の考える力を育てるための「問い」の作り方を整理します。

「考えてもらう」前に必要な知識がそろっているか確認する

後輩に考えてもらいたいとき、最初から「どう思う?」と問いかければよいとは限りません。考えるためには、その前提となる知識や情報が必要です。例えば、ある患者への対応について考えてもらう場合でも、必要な薬学的知識や院内ルール、患者情報を十分に持っていなければ、本人だけで適切な判断をすることは難しくなります。

そのため、まず確認したいのは次のような点です。

  • 必要な知識を持っているか
  • 判断に必要な情報が与えられているか
  • これまでに似た経験があるか
  • 何を基準に考えればよいか理解しているか

「考えない」のではなく、「考えるための材料が不足している」可能性もあることを意識する必要があります。

答えではなく「考え方」を教える

後輩育成では、正解を教えることだけでなく、そこに至るまでの思考プロセスを言葉にして伝えることが重要です。例えば、「私はまず患者背景を確認して、その次に検査値を見ます。そのうえで、この薬を継続するリスクと中止するリスクを比較します」というように、上司・先輩がどのような順番で考えているかを説明します。

経験を積んだ人にとっては無意識に行っている判断でも、経験の浅い人にはその判断軸が見えていないことがあります。そのため、「何を最初に確認したのか」「なぜその情報を重視したのか」「どの選択肢を比較したのか」「最終的に何を判断基準にしたのか」を言語化します。

「何をするか」だけでなく、「どう考えたか」まで伝えることで、次に似た状況が起きたときに本人が考えやすくなります。

「どう思う?」だけでは考えにくいことがある

後輩に考えてもらうために、「どう思う?」と問いかけることがあります。しかし、問いの範囲が広すぎると、相手は何について答えればよいのか分からなくなることがあります。

特に経験が浅い段階では、「どう思う?」「何か意見ある?」「自分で考えてみて」といった抽象的な問いだけでは、考えるための入口が見つかりません。この場合は、「この患者さんで、まず確認したい情報は何だと思う?」「この2つの選択肢には、それぞれどんなメリットとリスクがある?」「今回うまくいかなかった原因を一つ挙げるとしたら何だと思う?」「次に同じ場面があったら、最初に何を変える?」など、問いを少し具体的にします。

問いの範囲を絞ることで、相手がどこから考えればよいか分かりやすくなります。

「正解を当てる問い」にしない

問いかけがうまく機能しない理由の一つに、「上司が考えている正解を当ててもらう質問」になっていることがあります。

例えば、「こういう場合、普通はどうすると思う?」「何か足りないと思わない?」「他に見るところがあるよね?」といった問いは、表面的には質問ですが、実際には「私が考えている答えを当ててほしい」というメッセージになっています。

これを繰り返すと、後輩は自分で考えるよりも、「上司が何を言ってほしいのか」を考えるようになります。考える力を育てるためには、まず相手の考えを聞き、その後に不足している視点を補う方が適しています。

例えば、「あなたはどう考えた?」「そう考えた理由は何?」「他に可能性があるとしたら何がある?」と聞いたうえで、「私はここも確認するといいと思います」と追加します。

問いは正解を当てさせるためではなく、本人の思考プロセスを引き出すために使うことが重要です。

考えさせる問いは「判断軸」を育てるために使う

後進育成で目指したいのは、上司がいなくても同じような場面で判断できるようになることです。そのためには、個別の答えだけではなく、複数の場面で使える判断軸を身につけてもらう必要があります。

例えば、「この資料で一番重要な情報は何?」「優先順位をつけるとしたら何を基準にする?」「患者への影響が大きいのはどこ?」「今回と前回で違う条件は何?」といった問いです。

こうした問いを繰り返すことで、本人の中に「まず優先順位を考える」「リスクを比較する」「条件の違いを見る」といった思考の型が形成されていきます。一つのケースの答えを教えるのではなく、次のケースにも使える考え方を育てるという視点が重要です。

問いかけた後は「待つ」ことも必要

問いを投げかけても、すぐに答えが返ってこないことがあります。このとき、沈黙に耐えられず、「つまりこういうことだよね」「私ならこうするかな」とすぐ答えを出してしまうと、本人が考える時間を奪ってしまいます。

経験が浅い人ほど、頭の中で情報を整理し、言葉にするまでに時間がかかります。そのため、「少し考えてみて」「今すぐ答えなくてもいいので、あとで教えてください」と時間を与えることも必要です。

問いを投げることと同じくらい、相手が考える時間を確保することも重要です。

すべての場面で問いかける必要はない

考える力を育てたいからといって、すべての場面で問いかける必要はありません。医療安全に関わる緊急性の高い場面では、明確な指示が必要です。また、本人に必要な知識がない状態では、先に教えることが適切な場合もあります。

一方で、やり直しが可能で、本人に考える材料があり、育成のための時間を確保できる場面では、問いかけを活用できます。「今は指示した方がよいのか」「先に知識を教えた方がよいのか」「考えてもらう余地があるのか」を状況に応じて判断する必要があります。

指示と問いかけの使い分けについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
部下・後輩には指示する?考えさせる?病院薬剤部の人材育成とフィードバック

考える力を育てる問いを作るときのポイント

後輩・部下に問いかける際は、次の点を意識すると整理しやすくなります。

  • 考えるために必要な知識や情報がそろっているか確認する
  • 「どう思う?」だけでなく、考える範囲を具体的にする
  • 正解を当てさせる問いにしない
  • 本人がどのように考えたのかを聞く
  • 次の場面でも使える判断軸を意識する
  • すぐに答えを教えず、考える時間をつくる
  • 必要に応じて上司・先輩自身の思考プロセスを説明する

問いかけの目的は、会話を増やすことではありません。本人が一人でも考え、判断できる範囲を少しずつ広げていくことが、後進育成における問いの役割です。

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後輩・部下の考える力を育てる問いの作り方については、無料オンラインセミナーのアーカイブでも解説しています。
「考える力を育みたい」考えさせる問いの作り方をYouTubeで見る