愛知県病院薬剤師会「中堅薬剤師のための後進育成実践研修」を実施しました
2026年10月4日、愛知県病院薬剤師会の中堅薬剤師を対象に、「中堅薬剤師のための後進育成実践研修」を実施しました。
今回のテーマは、後輩が「わかる」だけでなく、「できる」、そして「自分から動く」ようになるまで、どのように関わるかです。
「結局、自分でやった方が早い」
「同じように教えているのに、後輩によって成長に差がある」
「何度も伝えているのに、行動が変わらない」
「厳しく伝えるべきか、見守って任せるべきか迷う」
後進育成に関わる中堅薬剤師の先生方からよく伺うこうした悩みをもとに、講義だけではなく、個人ワーク、グループディスカッション、ロールプレイを交えながら、後輩の主体性を引き出す関わり方を考えました。
研修では、中堅薬剤師としての後進育成の役割、主体性を引き出すコミュニケーションとフィードバック、自施設で実践する具体的な行動を扱いました。
「教える」と「育てる」は同じではない
研修の最初に考えたのは、「教える」と「育てる」の違いです。
説明を聞いて理解できることと、実際の場面で実践できることは同じではありません。
さらに、実践できるようになったとしても、自分で考え、自分から行動するとは限りません。
今回の研修では、
「わかる」=知識・理解
「できる」=実践・スキル
「自分から動く」=自分で考える・取り組む・続ける
と整理しました。
そのうえで、
「教える」は、わかるまで。
「育てる」は、わかる→できる→自分から動くまで。
と考えました。
中堅薬剤師には、自分自身が業務を遂行することに加えて、後輩ができるようになるまで支え、自分から動くきっかけをつくる役割があります。
役割そのものを変えるのではなく、関わり方を少し広げていくという考え方です。
後輩を「自分から動く」状態にするには
「やるべきことは分かっているはずなのに、なかなか動いてくれない」
こうした場面では、「本人のやる気がない」と考えてしまうことがあります。
しかし、モチベーションは単なる「やる気」ではなく、行動を始め、方向づけ、続けることに関わる心理的なプロセスです。
研修では自己決定理論をもとに、
自律性:自分でやり方や進め方を選べる
有能感:自分ができる、役立っていると感じられる
関係性:誰かの役に立っていると感じられる
という3つの視点から、後輩の主体性を考えました。
例えば、「指示どおりに動いて」とすべての方法を指定するのではなく、やることの大枠は示しながら、やり方や進め方には本人の工夫を任せる。
「頑張っているね」と抽象的に伝えるだけではなく、「先週より記録時間が短くなっているね。何か工夫したの?」と、具体的にできていることを返す。
「件数を上げてください」と数字だけを伝えるのではなく、その仕事が患者さんやチームにどうつながっているのかを伝える。
少しの関わり方の違いが、「やらされている」から「自分でやっている」への変化につながります。
同じことを何度言っても伝わらないときは、「相手の解釈」を知る
後進育成では、
「何回も説明したのに、また同じことをしている」
ということもあります。
このとき、さらに強く伝えたり、同じ説明を繰り返したりしても、相手が同じように解釈していれば、行動もなかなか変わりません。
研修では、伝える回数を増やす前に、
「相手には、どう伝わっているのか?」
を確認することを扱いました。
伝わらない
→ 相手はどう解釈している?
→ 何がズレている?
→ どう伝え直す?
という順番で考えます。
相手の解釈を知るためには、まず話を聞くことが必要です。
共感する、相手の言葉を繰り返す、要約・言い換えをする、考えを引き出す質問をする、といった方法も実際の会話例を通して扱いました。
「知っている」ではなく、実際に後輩役と話してみる
後半では、具体的なケースを使ったロールプレイを行いました。
参加者は「先輩役」「後輩役」「観察役」に分かれ、
「どのように声をかければ、後輩の考えを引き出せるか」
を実際に試しました。
先輩役が後輩と対話した後には、後輩役から「どう感じたか」、観察役から「よかったところ」「改善するとしたらどこか」をフィードバックします。
全員が役割を交代しながら、先輩側だけではなく、後輩側からもコミュニケーションを体験しました。
研修で扱ったケースでは、服薬指導件数が目標に届かず「毎日忙しく、指導に行く暇がありません」「どうすればよいかわかりません」と話す後輩に対して、すぐにアドバイスするのではなく、まず何が起きているのかを聞くことに挑戦しました。
参加された先生方から、多くの声をいただきました
研修後のアンケートには、後進育成について日頃感じている悩みと重なる部分も多かったようで、具体的な声を数多くいただきました。
「とてもためになる講演ありがとうございました。日々の業務に活用していきたいです。」
「日々悩んでいることが、自分だけじゃないんだと分かり少し心が軽くなりました。今日学んだ事を明日からトライしてみたいと思います。」
「ハッと気付かされることも多くとても勉強になりました。ありがとうございました。」
「最後の質疑応答の内容が、まさに今日教えていただいたまずは質問に対して共感してから、こちらの意見を伝えるとゆうのを体現されてるなと思い勉強になりました。ありがとうございました。」
「本日は大変有意義なご講演ありがとうございました。グループワークで他施設の方々と共有できたこと、自分自身の振り返りが重要であることを身をもって体験できました。」
「自己解析や他者の考え方など、様々な気づきがあり大変勉強になりました。ありがとうございました。」
「後輩育成について、『教える』だけではなく『できる』『自分から動く』まで支援するという視点が大変参考になりました。特に、相手の解釈を知った上で関わり方を変えることの重要性を学びました。今後の後輩指導に活かしていきたいと思います。ありがとうございました。」
「他の参加者も同じような悩みを抱えていることに、安心とこれからのモチベーションを感じました。ありがとうございました。」
「ワークが多く、実践的に学ぶことができて良かったです。ありがとうございました。」
「今日は貴重なお話をありがとうございました。10年目とは中堅であり、上司と後輩の橋渡しの存在として本当に大事であることを実感しました。後輩を育てることは自分の成長にもつながると思うので関わり方伝え方を工夫していきたいと感じました。」
「本日はご講演ありがとうございました。これまで『育てる』という事が『できる』までで終わっていた事に気付きました。また自身の業務に対するモチベーションを再認識する機会が得られて良かったです。」
主催の先生方と
研修終了後、主催の先生方とご一緒に撮影させていただきました。
当日の運営からご調整まで、貴重な機会をいただきありがとうございました。

写真左より、奥平正美先生(JA愛知厚生連 知多厚生病院)、桜田宏明先生(一宮市立市民病院)、田口恵実、滝本典夫先生(医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 薬剤部)
中堅薬剤師だからこそできる後進育成
中堅薬剤師は、管理職ではなくても、後輩にとって身近な相談相手であり、日々の業務を一緒に行う先輩でもあります。
自分ができることを増やすだけでなく、
「どうすれば、後輩もできるようになるだろう」
「どうすれば、自分で考えて動けるようになるだろう」
と関わり方を少し広げることが、チーム全体の成長につながります。
pharmakeでは、後進育成を「教え方」の問題だけとして捉えるのではなく、認知やモチベーション、コミュニケーションの仕組みを踏まえながら、実際の現場で使える形で学ぶ研修を行っています。
知識を聞いて終わるのではなく、自分自身の経験を振り返り、他施設の参加者と話し、実際に声をかけてみる。
そうした体験を通じて、翌日の後輩との関わり方が一つでも変わる研修を、今後も届けていきます。