大阪府病院薬剤師会で「自分の成長と人材育成を両立する関わり方」をテーマに講演しました
「部下や後輩を育てなければならない。自分自身も学び続けたい、でも時間がない」
病院薬剤部門のリーダーや管理者の先生方とお話ししていると、この両立の難しさについて伺うことがあります。
人が足りない中でも、日々の業務を回し、スタッフからの相談に対応し、人材育成も進めなければなりません。その結果、管理者自身が業務を巻き取り、育成や対話、振り返りの時間だけでなく、自分自身が学ぶ時間まで失われていくことがあります。
そこで今回の研修では、「自分の成長と人材育成を両立する関わり方」をテーマに、人を育てるために、まず自分自身が経験から学ぶプロセスを体験することを目的として、日常業務を学習機会に変える方法や、明日から実践できる振り返り・フィードバックについて扱いました。
「学ぶ時間」を新しくつくるのではなく、日常の経験から学ぶ
仕事が忙しくなるほど、「勉強する時間がない」「研修を受ける時間がない」という問題が生じます。
しかし、学習は講義を受けたり、本を読んだりすることだけではありません。
日々の仕事の中には、患者さんへの対応、後輩とのやり取り、他部署との調整、会議での意思決定など、多くの経験があります。
重要なのは、経験したことをそのまま終わらせず、「なぜ、あのときうまくいったのだろう」「自分は何を考えて、あの対応をしたのだろう」「次に同じ状況になったら、どうするだろう」と振り返ることです。
研修では、経験・内省・概念化・試行からなる経験学習サイクルの考え方をもとに、経験を振り返ることで、日常業務そのものを学習機会に変えるという考え方をお伝えしました。
一人で考えるだけでなく、他者と振り返る
今回の研修では、講義を聞くだけではなく、参加された先生方同士で自分の経験や考えを言葉にする時間を多く設けました。
自分が考えていることを誰かに説明しようとすると、「自分はこう考えていたのか」と、自分自身の思考が整理されます。
さらに、他の人の経験を聞くことで、「そういう見方もあるのか」「自分とは違う」と、自分だけでは得られなかった視点にも気づくことができます。
そこで取り入れたのが、「個人で考える→一人ずつ順番に共有する→学びを整理する」というラウンドロビンです。
発言が得意な人だけが話すのではなく、一度自分で考えたうえで全員が順番に話すことで、経験を言語化し、互いの視点から学べるように学習そのものを構造化しました。
人は「できなかったこと」に目を向けやすい
振り返りというと、私たちは無意識に、「何ができなかったか」「何を反省しなければならないか」から考えがちです。
しかし、人材育成では、「できなかったこと」だけを見るのではなく、すでにできている行動を本人が認識できるようにすることも重要です。
例えば、部下や後輩が作成した資料について、「今日の資料、見やすかったよ」と伝えるだけでも、自分が行ったことの何がよかったのかを認識するきっかけになります。
研修では、こうしたフィードバックは長時間の面談だけで行うものではなく、日常業務の中で数秒でもできることをお伝えしました。
育成というと、「時間を確保して、しっかり教えなければならない」と考えがちですが、日常の中で小さくフィードバックを重ねることも、人を育てる関わりの一つです。
振り返りを「感想」や「反省会」で終わらせない
一方で、ただ「どうだった?」と振り返るだけでは、「楽しかったです」「次はもっと頑張ります」といった感想や反省で終わってしまうことがあります。
そこで今回の研修では、経験を次の行動につなげるための振り返りとして、GASモデルを用いました。
まず、「できた・できなかった」と評価するのではなく、何をしたのかという行動・事実と、なぜそうしようと思ったのかという意図を言語化する。
次に、その行動を選んだ背景や、周囲への影響、他に取り得た選択肢について考える。
最後に、「もう一度同じ場面が来たらどうするか」を考え、次の行動につなげます。
研修では実際に、リーダーとして「うまくいった」「手応えがあった」と感じた場面を取り上げ、なぜその行動を選んだのか、その結果相手がどう動いたのかを振り返っていただきました。
ポイントは、経験を評価することではありません。行動を言語化し、その背景にある意図や意味を分析して、次に再現できる形にすることです。
自分が学ぶプロセスを知ることが、人を育てることにもつながる
人材育成というと、「相手に何を教えるか」「どう伝えるか」に意識が向きやすくなります。
しかし、自分自身が、「自分は経験からどう学んでいるのか」「何を振り返ると、次の行動につながるのか」を理解することは、部下や後輩の学習を支援するときにも活かすことができます。
今回の研修では、自分自身の経験を振り返り、他者と共有し、フィードバックを受けるプロセスを実際に体験しながら、自分の成長と人材育成を別々のものとして考えるのではなく、日常業務の中で両方を進める方法について、参加された先生方と一緒に考えました。
参加者の先生方からは、こんなお声をいただきました
「薬剤師2年目とまだまだ若手ですが、少しでも『できる』部分を自分で認めてあげることも大切だと思いました。ありがとうございました。」
「現場で悩んでいる問題をテーマにしていただいたことが、他の病院でも同じように問題としてあるんだなと認識することも出来ました。」
pharmakeでは、知識やスキルを一方的にお伝えするだけではなく、参加者自身の経験を教材として、考え、言葉にし、他者と共有し、次の行動につなげる研修を設計しています。
研修という限られた時間だけで学びを終わらせるのではなく、日々の業務そのものが学習機会となり、そこで働く一人ひとりが経験から学び続けられる組織づくりを支援していきます。