北病薬「薬剤部門マネジメントセミナー」で「疲弊しない薬剤部門づくり」をテーマに講演しました

2026年09月02日
導入事例

病院薬剤師に求められる役割は増えています。
一方で、人員を簡単に増やすことはできず、働き方改革の中で、一人ひとりが働く時間を増やして対応することも難しくなっています。
それでも、患者さんに必要な医療を提供し、薬剤部門として求められる役割を果たしていかなければなりません。
では、人も時間も簡単には増やせない中で、どうすれば薬剤部門として成果を出し続けることができるのでしょうか。
今回、北病薬「薬剤部門マネジメントセミナー」にて、「疲弊しない薬剤部門づくり―人材不足時代のマネジメントを考える―」をテーマに、限られた人員・時間の中で成果を出すための「組織の仕組み」と「人が動く仕組み」について講演しました。

管理者が疲弊するのは、「仕事が多い」からだけではない

病院薬剤部門では、中堅層が少なくなり、教育や相談、日々の判断が管理者に集中しているという声をよく伺います。
さらに、働き方や仕事に対する価値観も多様化し、一律のマネジメントではなく、一人ひとりに合わせた関わりも求められるようになっています。
その結果、管理者には、教育・相談、人員調整、部門間調整、委員会対応など、種類の異なる仕事が次々と集まります。
問題は、単純な仕事量だけではありません。
緊急度も重要度も異なる仕事について、「何を優先するのか」「誰に任せるのか」「どう対応するのか」を一日中判断し続けなければならないことです。
講演では、こうした「判断と調整が管理者に集中する構造」そのものが、疲弊を生み出す一つの要因になっているとお話ししました。

「もっと頑張る」のではなく、仕事の流れを変える

では、この状態をどう変えていけばよいのでしょうか。
一つ目に取り上げたのが、「組織の仕組み」です。
人を急に増やせないのであれば、今いる人員と使える時間の中で、どうすれば成果を高められるのかを考える必要があります。
そこで講演では、仕事の流れや業務設計を考える「オペレーションマネジメント」について扱いました。
すべての業務を一度に改善するのではなく、まず見るのは、仕事が最も詰まっている「ボトルネック」です。
例えば、監査を速くしてもピッキングが追いつかなければ、全体の流れは速くなりません。特定の薬剤師に問い合わせが集中していれば、そこが全体を止めている可能性があります。
ボトルネックを見つけたら、「そもそも必要か」「一緒にできないか」「順序を変えられないか」「もっと簡単にできないか」というECRSの視点から、業務を見直していきます。

「昔からやっているから必要」を、一度疑ってみる

講演では、実際の病院薬剤部門での業務改善事例も紹介しました。
ある事例では、服薬管理指導の業務工程を一つずつ可視化したところ、入院時に作成していた様式に時間がかかっていることがわかりました。
そこで、「そもそも、この様式は本当に必要なのか」と確認したところ、診療報酬上、作成が必須ではないことが判明。運用そのものを見直すことで、業務負担を減らすことができました。
別の事例では、退院時指導で電子カルテにすでに記載されている内容を別の様式へ転記していた業務について、医事課と一緒に算定要件を確認しました。
その結果、その作業も必須ではないことがわかり、不要な転記を削減。時間を創出したことで、退院時指導件数は約2倍に増加しました。
「ずっとやっているから」「算定に必要だと思っていたから」という現場の当たり前を一度立ち止まって確認することが、業務改善の出発点になります。

もう一つの「人が動く仕組み」

しかし、業務を効率化するだけでは十分ではありません。
どれだけ仕事の流れを整えても、現場で起きることについて、すべて管理者に判断を仰がなければ動けない組織であれば、管理者への負荷は残ります。
そこで後半では、「人が動く仕組み」として、指示・任せる・フィードバック・エンパワーメントについて扱いました。
例えば、経験豊富なスタッフに「マニュアルを作っておいて」と伝えれば、目的を理解し、自分で考えて進められるかもしれません。
一方、まだマニュアル作成の経験が十分でないスタッフに同じ言葉を伝えると、「何をどこまで作ればよいのかわからない」ということが起こります。
同じ言葉でも、ある人にとっては「任せる」になり、別の人にとっては「指示不足」になるのです。

「任せる」は、何も言わないことではない

講演でお伝えしたのは、「指示」と「任せる」のどちらが正しいということではありません。
相手の経験やスキルに応じて、どこまで具体的に伝える必要があるのかを変えることが重要です。
経験の浅い人には、「何を・いつまでに・どのように」を具体的に伝える。
一方、一人で判断できる人には、目的やゴールを共有したうえで、方法は本人に任せる。
相手に合わせた指導とは、単純に伝える量を増減させることではなく、その人が一人で動くために必要な具体性を調整することだとお伝えしました。
そして、任せた後には結果を見て、「できていたこと」と「期待値とのズレ」をフィードバックする。
このやり取りを繰り返しながら、少しずつ本人が判断できる範囲を広げていくことが、エンパワーメントにつながります。

疲弊しない薬剤部門を、「仕組み」と「人」の両方から考える

人が足りないとき、採用はもちろん重要です。
しかし、人員が増えるまで管理者がすべてを抱え続ける、という状態では、組織を持続させることはできません。
仕事の流れを見直し、限られた人員でも成果が出る仕組みをつくる。
同時に、一人ひとりの経験やスキルに合わせて仕事を任せ、フィードバックを重ねながら、現場で判断できる人を増やしていく。
今回の講演では、「組織の仕組み」と「人が動く仕組み」の両方から、管理者だけに判断や仕事が集中しない薬剤部門をどうつくるかを、参加された先生方と一緒に考えました。


pharmakeでは、病院薬剤部門における人材育成・組織開発だけでなく、業務オペレーションの改善まで含め、それぞれの病院が抱える課題に応じた研修・伴走支援を行っています。
「もっと頑張る」ことで支える組織ではなく、限られた人員・時間でも成果を出せる仕組みをつくり、そこで働く一人ひとりが力を発揮できる状態をつくる。その両面から、病院薬剤部門の取り組みに伴走していきます。